研究内容(H27年度の研究を紹介します)

鉛フリーはんだの粘度測定システムの開発

図1 共軸二重円筒形回転粘度計

自動車などに搭載されている電子部品には多くの電子回路の基板が含まれているため、大量のはんだを使用しています。しかし、鉛は人体に有害であるため、従来のはんだから鉛フリーのはんだに移行することが求められている状況です。鉛フリーはんだを大量生産するための材料設計には精度の高い粘度の物性値が必要ですが、溶融鉛フリーはんだの粘度の実測データが不足しているため、大量生産のプロセスが成立していない状況にあります。そこで、測定の精度を下げる原因と考えられる酸化被膜の形成を除去した新たな粘度測定システムを開発し、鉛フリーはんだの粘度測定を系統的に行いました。

当研究室では、酸化被膜の形成を除去するため、粘度計を還元ガスフロー対応のグローブボックス内に設置して、還元雰囲気の状態で粘度測定を行いました。粘度計には共軸二重円筒形回転粘度計(図1)を用いています。本粘度計は、サンプルチャンバーとスピンドルを同軸に置き、その間を溶融はんだで満たした状態でスピンドルを一定の角速度で回転させることで、スピンドルが受ける粘性トルクを測定して粘度の値が求められます。測定は300℃まで加熱可能なサーモセルを用いて280℃まで加熱し、20℃毎に温度を降下させ、温度が一定になった状態を確認してから実施しました。測定で用いたスピンドルはアルミニウム製の使い捨てスピンドルを設計し測定に使用しました。測定では、粘度の文献値が存在するSn-Pbはんだと共に、鉛フリーはんだの特性の鍵となるAgの添加量に着目して、Agの添加量が0~4wt.%の数種類のSn-Ag-Cuの粘度測定を系統的に行いました。

従来はんだの粘度を測定した結果、0.1%以下の酸素濃度の水素雰囲気を作り出すことに成功し、系統的なはんだの粘度測定を行うのに十分な測定環境が得られました。また、SEM-EDSを用いてサンプルチャンバー、はんだ、スピンドルの断面観察をしたところ、酸化被膜の形成やスピンドルとはんだの反応は顕著でないことも明らかにしています。測定した鉛フリーはんだの粘度はいずれも負の温度依存性を示し、Agの添加量が粘度に影響することがわかりました。(近日公開予定です。)

サーモウェーブアナライザを用いた複合材料の熱拡散率測定

複合材料は、2種類以上の素材を組み合わせることでそれぞれの素材が持つ特性を取り込んで複数の特性を発揮できるように工夫された材料です。そのため、航空機の翼や釣竿、テニスラケット等様々な分野で広く使われています。しかし、複合材料は面内方向と厚さ方向で異方性を持つため、従来の熱拡散率の測定結果が得られる測定手法だけでは測定が不十分なのが現状です。そこで、周期加熱放射測温法を原理としたサーモウエーブアナライザ(TA)(図2)を用いて、複合材料の面内方向および厚さ方向の熱拡散率を測定し、熱物性の立場からの材料評価を行いました。

当研究室では、①ポリエーテルエーテルケトン (polyetheretherketone, PEEK)、②PEEKを母材とし、ガラスファイバーを強化繊維として30%含んだもの、③PEEKを母材とし、カーボンファイバーを強化繊維として40%含んだもの、④PEEKを母材とし、カーボンファイバーを強化繊維としてクロス状に積層したもの、の4種類の複合材料を測定試料としました。これらの試料を厚さ1μmの金蒸着を行い、その上に黒化処理を行うことで、レーザ光を透過しないよう施しました。TAを用いた面内方向の測定は距離変化法で、厚さ方向の測定は周波数変化法で熱拡散率を解析しています。TAでの熱拡散率測定の検証を行うため、レーザフラッシュ法を用いて4つの複合材料の厚さ方向の熱拡散率を測定し、TAでの実測値の比較検討を行いました。

測定を行った4種類全ての試料において、面内方向の熱拡散率は、厚さ方向の熱拡散率よりも一桁大きいことが明らかとなりました。面内方向は強化繊維が配向している方向であるのに対し、厚さ方向は母材と強化繊維との界面が多数存在している方向であることが原因であると考えられます。また、厚さ方向の熱拡散率はレーザフラッシュ法により測定して得られた値よりも小さいことが判明しました。恐らく、試料からの熱損失が影響したものと推測されます。ここの部分が今後の課題です。

図2 サーモウェーブアナライザ(TA)